企業向けのタブレット市場の現状と今後の予測は?
はじめに
現在では、業務用も含め公共施設など様々なシーンでタブレットが活用されています。タブレットは、2010年にApple社が開発したiPadにより一大市場が形成され、次いでAndroidの市場参入で成長を続けていました。一方で近年、業務用タブレットの普及はピークアウトを迎えているという声もあります。
これからのタブレット市場は上昇するのでしょうか。ここでは、データを参考にしながらタブレット市場の現状と今後の動向について考えていきましょう。
タブレット市場の現状について
ICT市場専門のリサーチ・コンサルティング会社のMM総研は、2021年の「タブレット端末出荷台数調査」を発表しました。それによると、2021年暦年のタブレット出荷台数は939万台。2020年は969万台と過去最高を記録しており、前年と比較すると3.1%の減少です。
2020年に出荷台数が伸びたのは、小中学校を対象としたGIGAスクール構想を受けたタブレットの需要が高まったことが理由の1つにあげられています。
政府は構想の中で「タブレットを生徒1人につき1台」という目標を掲げていました。コロナ禍を機に、休校やオンライン授業への活用がタブレットの急速な需要を後押ししたと考えられます。
しかし2021年は、3月の時点で全国の小中学校への配備が落ち着きをみせたこともあり、出荷台数が減少する結果となったのです。
また、国内タブレット端末出荷台数の推移をみると、「タブレット元年」とも言われる2010年から市場は順調に成長していきましたが、2015年をピークに減少・停滞の状態を繰り返していました。2020年は教育分野への普及で特別に需要があったものの、それ以外の分野では足止めがかかっている状況と言えます。
そのことから同調査の報告では、タブレット市場が縮小傾向にあり、2022年以降は2020〜2021年の900万台を下回る規模で推移していくのではないかと予想しています。
参考:MM総研「2021年暦年 タブレット端末出荷台数調査」
さらに電子情報技術産業協会(JEITA)によると、2021年度のタブレット出荷実績は、上半期が前年同期比84.1%、下半期が77.1%と減少しています。ちなみに、2022年は第1四半期が公表されていますが、出荷実績は前年同期比で51.9%まで下降しています。
参考:一般社団法人 電子情報技術産業協会「タブレット端末国内出荷実績」
今後のタブレット市場の予測
では、なぜタブレット市場は縮小の傾向にあるのでしょうか。それは、多くの企業が2015年までにタブレットを導入しており、2015年以降に導入を検討している企業が少ないからと考えられます。
2016年にインフォテリアが公表した「上場企業におけるタブレット・スマートフォン利用動向調査レポート」によると、「2015年までに初期導入」をしている企業は57%、「2016年以降」は2%、「時期は未定」14%、そして「導入予定はなし」が27%となっています。
つまり、半数以上が2015年の段階で初期導入を済ませており、企業での普及が一巡りしたという感があります。
初期導入が進んでいる業種は「電気・ガス・水道」「流通・小売」「商社」などがあり、2016年以降の導入を検討している、あるいは時期が未定の業種は「教育・学習支援業」「建設業」などがあげられました。
参考:インフォテリア株式会社「上場企業におけるタブレット・スマートフォン利用動向調査レポート」
今後は、どの産業がタブレットを活用するかに注目していく必要があるでしょう。実際、調査結果の通り2020年には「教育・学習支援」でタブレットの需要は伸び、建設業では国土交通省がICTを活用する取り組み「i-Construction」を進めています。
他の産業でも、総務省ではタブレット端末を活用した高齢者向けのICT産業にも目を向けています。高齢者を対象にしたタブレットの利用意向の調査でも、「スーパー・コンビニの配送」「血圧・歩数などの健康管理」「食事と栄養管理」「孫とテレビ電話」「振り込み・年金手続きを自宅で」などに関心を示す結果が出ています。
近年は高齢者でもスマートフォンやパソコンを持つ人が増え、デジタルに対する抵抗感が薄くなりつつあります。医療・介護分野でもDX化が進んでおり、タブレットを活用した高齢者向けサービスの需要が高まることも考えられるでしょう。
まとめ
タブレットは、業務用としては早い段階から導入が進められてきたため、普及がある程度済んでいることが市場の伸びにつながらないことが分かりました。一方で、前述したインフォテリアの調査では、タブレットを十分に活用しきれていない当時の課題も明らかにしています。
タブレットは、適度な大きさで場所を選ばずに設置できること、持ち運びができることなどが特徴ですが、業務効率化を図る上でも最適なツールと言えます。タブレット用のアプリやシステム、セキュリティ対策も整備されてきた今こそ、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
業種別のタブレットの活用方法についてさらに知りたい方は、こちらを参考にしてみてください。