事件・事故の防止に努め、発生したら即対応!警察のタブレット活用法は?
警察官の業務は、事件や事故が起きた場合に迅速に対応すること、事件や事故の発生を防ぐためにパトロールなどをして防犯活動に取り組むこと、道案内や落とし物の受け付けなどがあります。
現在ではさまざまな業種でスマート化が進んでいますが、それは警察がおこなう業務においても同様といえます。タブレットを有効に活用することで、事件の対応や防犯活動など、各種の対応において業務の負担軽減が期待できます。
この記事では、警察業務におけるタブレットの活用方法について紹介します。
「高度警察情報通信基盤システム」の活用
警察庁は2019年に「高度警察情報通信基盤システム」を導入しました。このシステムには「PⅢ(ポリストリプルアイ)」という名称が付けられています。
PⅢは、警察官にタブレットまたはスマホを配布します。警察官がこれらの端末を使用することで、電話で状況を報告することに加え、画像を撮影して報告することできます。
それにより、事故現場の状況をよりくわしく報告することが可能になりました。
PⅢの特長は、警察の業務において民間の携帯電話通信網を活用している点です。
このシステムが導入される前は、警察独自の通信網として「警察無線」を使用していました。警察無線に加えて民間の携帯電話通信網も合わせて活用すると、警察官がタブレットなどの端末を所持していることにより、警察署にいながら警察官の位置情報を把握できるなどのメリットがあります。
PⅢのシステムを活用することによって、事件や事故が発生した場合の対応がスムーズになるため、迅速な解決につながりやすくなります。
PⅢは翻訳機能も搭載 訪日外国人の数の増加に対応
PⅢには翻訳機能が搭載されています。
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の翻訳技術がPⅢに搭載されることが決まった2020年6月に、下記の内容の翻訳が可能であることが発表されました。
・日本語に翻訳可能なのは29種類の言語
・音声入力は日本語を含めて14種類の言語に対応
・音声出力は日本語を含めて13種類の言語に対応
出典:国立研究開発法人情報通信研究機構
NICTの多言語音声翻訳技術が警察庁のシステムに採用
https://www.nict.go.jp/
PⅢのシステムは世界の主要な言語の翻訳に対応しています。しかも、音声入力や音声出力にも対応しているため、外国人がタブレットに向かって話しかけることで、タブレットがその内容を翻訳し、音声で返答できます。
そのため、警察官が外国語を話せなくても、タブレットを持っていれば外国人との会話の内容を把握することが可能です。
日本を訪れる外国人の数はコロナ禍においては減少したものの、コロナの状況が落ち着きつつあることを受けて、訪日外国人の数は回復のきざしをみせています。
警察官の業務の一つに道案内があり、外国人旅行者が増えた現在では、外国人から問い合わせを受ける機会も多くなりました。
タブレットに翻訳機能が搭載されていることによって、外国人と警察官との間でコミュニケーションが可能となり、外国人に対して適切な応対ができるようになります。
タブレットは防犯対策にも活用が可能
タブレットは防犯対策としても利用できます。
近年、特に問題となっているのが特殊詐欺による被害の増加です。特殊詐欺の流れについて一般的な傾向を示すと、最初は相手に対して不安をあおり、その不安を解決する手段を示しながら相手に信頼感を持たせ、現金などをだまし取ります。
主な特殊詐欺としては「オレオレ詐欺」や「預貯金詐欺」「キャッシュカード詐欺盗」があります。一例として預貯金詐欺の流れについて説明します。
だます側の人は銀行協会などの職員であると名乗ります。そして「キャッシュカードが不正利用されています。新しいキャッシュカードに交換するためにこちらで預かる必要があり、カードの交換手続きで暗証番号が必要です」と相手に説明をします。
それを聞いた人が、カードを渡すときに暗証番号を教えてしまうと、現金が引き出されてしまいます。
警察官が住民に対して特殊詐欺の内容を説明する場合、パンフレットを使う方法もありますが、パンフレットを見ながら説明を受けてもわかりにくいと感じる人もいることでしょう。効果的なのは、タブレットを使って説明する方法です。
タブレットなら動画で説明できるため、説明を受ける側としては特殊詐欺の内容を容易に理解できます。タブレットで防犯対策をおこなえば、事件や事故の発生を防ぐ効果が見込めます。
警察の業務体験をタブレットで!
静岡県警では、警察本部の1階にある「エスピーひろば」で、子どもを対象として警察の業務を体験できるサービスを提供しています。
エスピーひろばでは、タブレットを活用したAR(拡張現実)体験ができます。タブレットを利用しながら、警察で110番通報を受けたら警察官がどのように事件や事故を解決していくのかを、まるで利用者自身が体験しているような感覚で学べます。
また、タブレットを使うと、エスピーひろばに出現した3Dのパトカーの回転灯を光らせたり、サイレンを鳴らしたりすることも可能です。
そのほか、エスピーひろばでは展示されている白バイに乗車する体験ができたり、警察が地域の安全を守っている内容の画像を見たりすることもできます。
全国的に労働力人口が減少していく中、今後は警察官の確保が難しくなることが見込まれます。子どもたちが警察の業務に興味を持つためには、タブレットを活用したAR体験が有効といえます。
タブレットを警察の日常的な業務に活用するだけにとどまらず、採用につなげる使い方をすることは、まさに時代の流れといえるのではないでしょうか。
まとめ
警察の業務では、タブレットを事件現場の画像の送信に活用しているほか、防犯対策として住民に詐欺の内容を説明するためにも活用しています。
事件や事故の対応、あるいは事故の防止を目的としたタブレットの活用は有効な手段といえるでしょう。
そのほか、外国人とコミュニケーションをとるために翻訳の目的で活用したり、警察の業務体験としてタブレットを用いたAR体験に利用したりすることもあります。タブレットの機能を使いこなすことによって、警察業務が円滑に進みやすくなります。