弁護士業務でも進むIT化、タブレットで業務効率化を図る

コロナ禍を機に、リモートワークへ移行する法律事務所が増えてきました。紙書類を扱うことが多いこれまでの弁護士業務の在り方も見直され、IT化を進めているところも少なくありません。

個人弁護士または小規模な事務所がIT化を進めるために、手軽に活用できるのがタブレットです。

書類作成もあるため、もともとPCとの親和性が高い弁護士業務ですが、近年はリーガルテックと呼ばれる法律関連に役立つITサービスがたくさんあり、タブレットとの併用で業務を効率化しているところも増えています。

この記事では、弁護士業務でタブレットを活用するメリットや課題、便利なサービスなどを紹介します。

弁護士業務の課題

ほかの業界と同じように、法律事務所でもデジタル化は重要な要素と言えます。

たとえば紙書類の場合、顧客や案件ごとに書類作成、ファイリング、データ追加などに多くの時間を費やし、また外出先でもさまざまな書類や書籍などを持ち歩くことになります。

事務所にはファイリングした案件の保管スペースも必要で、資料を探すのにも時間がかかるでしょう。

そのため業務が効率化せず、コア業務にも注力しにくくなります。特にコロナ禍においては、デジタル化していない書類や資料を自宅や外出先で確認できないといった課題が多く見受けられました。

弁護士業務でタブレットを活用するメリット

2017年「弁護士白書」で弁護士業務の通信機器を調べたところ、タブレットは発売当時の2010年に1割未満でしたが、2016年には4割近くに増加しています。7割を超えるスマートフォンよりは少ないものの、タブレットには弁護士業務で活用できる多くのメリットがあります。

弁護士白書「弁護士の業務におけるITの活用に関する現状と課題」

たとえば事件ごとのファイルやメモ、各種書類などをPDF化・保存しておけば、タブレットを持ち歩いてどこでも仕事ができるようになります。情報のアップデートや共有も、リアルタイムに行えるでしょう。

起動も速く現場での写真・動画撮影がすぐにできるほか、タスク管理やスケジュール管理、判例の検索など必要に応じてすぐに確認することができます。

また弁護士が事務所で準備書面の起案などを行う際は、デュアルディスプレイ(2画面)で起案用と資料の閲覧用に分けて使うのが一般的です。

そこで、サブディスプレイとしてタブレットを使用することもできます。タッチパネルで操作もスムーズ、場所をとらずに画面を縦にも横にもできるので、パソコン2台よりも使いやすいという人もいます。

タブレットで利用できるアプリ・サービス

近年はさまざまなビジネスツールが利用できるようになり、弁護士業務でも活用されています。いくつかサービスを紹介しましょう。

Web会議アプリ

業務には顧客との面談や話し合い、弁護士会の会議などがあり、ZoomやSkype、Teamsなどが使用されています。最近では東京地裁・横浜地裁・さいたま地裁・千葉地裁などで、民事裁判の争点整理手続きにWeb会議を使用する取り組みが行われています。

案件管理アプリ

事件ごとに依頼者情報やコミュニケーションの記録、タスク、スケジュールなどをまとめて管理できるアプリがあります。近年は、弁護士業務に特化した事件管理サービスも増えています。

Webゆうびん/e内容証明

Webゆうびん/e内容証明は、パソコンやタブレット上で作成した書類・内容証明を送信することで、24時間郵便発送できるサービスです。郵便局に行く必要がなくなり時間を有効活用できます。

登記・供託オンライン申請システム

「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと」は、法務局に行かなくても不動産登記、法人登記などが簡単に電子申請できるサービスです。

ほかにも文書作成、電子契約、電子サインなど書類に関するサービスや、法律の専門書や過去の判例が検索できるサービスなどさまざまなツールが活用されています。

弁護士業務でIT化を進めるポイント

法律事務所でも、提出書類の電子化が認められるようになっていますが、内容によって完全な電子化が難しいのが現状です。たとえば、裁判所は原則として情報流通の電子化を認めておらず、現在でも対面、郵送、電話/FAXが使われています。

タブレット購入やIT化に向けた取り組みを検討する際は、弁護士業務の中で何を電子化し何を紙に残すか、どのようなツールを活用すると業務効率化につながるのか、見極めてから導入しましょう。

また扱っている業務上、IT化の障害となっているのが情報漏えいに対する懸念です。タブレットのIDパスワード管理、ハードウェアの暗号化など堅牢なセキュリティ対策が求められるでしょう。

まとめ

弁護士業務は外出先での仕事も多いため、タブレットやツールの活用は今後も増えていくことが考えられます。

ITを使う人、使わない人、業務のやり方は弁護士によって異なりますが、デジタル化やリモートワークが実現できれば、既存オフィススペースのままでも人員を増やすことが可能になり、事務所として案件解決力の強化にもつながるでしょう。

テレワークにおけるタブレットの活用についてさらに知りたい方は、こちらを参考にしてみてください。

テレワーク・リモートワークでのタブレット活用