海運業での管理こそタブレットを活用すべき!
- 2023.08.05
- 業種別活用法
海上を主な作業場としている海運業でもタブレットの活用は進んでいます。安全管理チェックなど、従来は紙で膨大な量の記録を必要としていたものが、タブレットを活用することで効率よく作業でき、管理データの保管や閲覧も容易となるでしょう。
今回の記事では、海運業でのタブレット活用方法と、活用する上で業界が抱えている課題を解説します。労働力不足に悩まされている海運業での解決策の1つとなり得るのがタブレットです。業務効率改善を検討しているかたは参考にしてみてください。
海運業ならではのタブレット活用方法
海運業のさまざまな場面でタブレットは活用できます。「安全管理チェック・船質管理・点検報告」の作業でどのように活用できるか解説します。
安全管理チェック
海運業のM0チェックは、夜間の無人運転時に必要な事前チェックであり、「マシナリー・ゼロ」の略称です。従来は機器で計測し、膨大な量の記録を紙で行っていました。しかし、最近ではタブレットを活用したM0チェックシステムを導入しています。
タブレットの導入したM0チェックシステムの活用により、従来の手法と比べてさまざまな利点があります。まず、専用のテンキーが搭載されており、計測やデータ入力が容易になりました。そのため、作業者は迅速かつ正確にデータを入力できます。
また、ペーパーレスの作業環境が実現できます。紙での記録が不要となり、環境への負荷を軽減するだけでなく、データの保管や管理も容易になるでしょう。
さらに、タブレットはデータのトレンドグラフ表示などの機能を備えており、業務効率の改善が可能です。過去のデータを可視化することで、トラブルの傾向や予兆を把握しやすくなり、適切な対策を取れます。
船質管理
船質管理の効率化のためにタブレットを活用できます。従来は人手不足により、船の状態や設備の点検・保守が充分に行われず、人身事故や貨物損傷、運航遅延などのトラブルが発生していました。
しかし、タブレットを使用することで、管理データの一元管理が可能になるため業務効率が改善できます。
タブレット上の専用アプリやソフトウェアを使用することで、船の構造や設備の点検項目や期限、修繕履歴などのデータを簡単かつ正確に管理可能です。タブレットを用いることで、点検・保守の計画立案や実施、監督が効率化されます。
さらに、タブレット上でデータを整理し、他の船舶の検査業務への展開もできます。船舶同士のデータ共有や共通の基準に基づく点検作業が可能になり、業界全体の船質管理の水準向上に寄与します。
また、過去の検査記録を簡単に参照できるため、トラブルの原因究明や改善策の検討にも役立つでしょう。
点検報告
点検報告作業でもタブレットが活用できます。点検項目やチェックリストをデジタル化し、作業者はタブレット上でそれらを確認しながら点検を実施します。そのため、点検漏れや見落としを防ぎ、正確な記録が可能です。
また、タブレット上で作業後の報告書を作成・提出できるため、業務の効率が改善されます。従来のような手書き作業や別のデバイスにデータを移す手間がかかりません。そのため、作業後の手続き時間が短縮され、運航への影響が最小限に抑えられます。
さらに、タブレット上で点検に必要なデータや情報を事前にダウンロードしておくことで、オフライン状態でも作業が可能です。海上で通信が途絶える環境でも、タブレットを使った点検作業が可能です。
これにより、船舶が通信が不安定な海域にいる場合でも点検を継続でき、作業のスケジュールに柔軟性を持たせられます。
タブレット活用に向けた通信環境の確保
海運業でタブレットの活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには、通信環境の確保が重要な課題です。海上でも途切れない高速通信環境が必要となります。
船舶は海上を航行するため、通信基地局からの遠距離通信や移動中の通信障害が起こりやすい環境です。このため、運航会社、通信事業者、船用機器メーカーなど、さまざまな業界が連携して海上での高速かつ安定した通信環境の実現に取り組む必要があります。
現在、沿岸域でも通信可能なLTE回線サービスや衛星回線サービスなどが検討されています。これにより、船舶が沿岸に接近する際にも通信が確保され、リアルタイムなデータのやり取りが可能となるでしょう。
通信ができない状況では、予測や事後のデータ処理が必要でしたが、リアルタイムのデータ通信が可能になることで、船舶の運航効率の向上や新たな付加価値の創出が期待されます。
リアルタイムなデータの収集や解析により、航行条件の最適化や予防保全の実施などが行え、安全性や効率性の向上につながります。
まとめ
今回の記事では、海運業でのタブレット活用方法と現在抱えている課題を解説しました。海運業では労働力不足によって、人身事故や貨物損傷、運航遅延などのトラブルを抱えていました。
タブレットを活用した業務効率改善は、海運業でDXの推進とともに求められているのが現状です。安全管理チェックのシステム化、船質管理データの一元管理、点検報告の標準化などにタブレットは活用できるでしょう。
ただし、海上での安定した通信環境が必要となるため、運航会社、通信事業者、船用機器メーカーなどが協力し環境作りを進めることが望まれます。