獣医師が動物病院でタブレットを導入 どのように活用する?

動物病院を経営する獣医師としては、飼い主にとって家族の一員であるペットに対し、ていねいな診察を心がけていることでしょう。しかし、限られた時間内でペットの診察をするためには、日々の業務の効率化を図ることが大切です。

それを実現する方法としてカルテの電子化があげられますが、現在ではタブレット端末に電子カルテを表示させることも可能となっています。この記事では動物病院を経営する獣医師がタブレットを活用する方法について説明します。

動物病院が抱える課題

動物病院が抱える課題としては、獣医師が一人で診察する動物病院が多いこと、そして、診察に時間がかかりやすいことがあげられます。

また、電子カルテの運用で課題を抱えている動物病院もあるのではないでしょうか。ここでは、これらの課題についてみていきます。

獣医師が一人で診察する動物病院が多い

農林水産省は同省のホームページに「令和4年飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)」を公表しています。

それによると、2022年(令和4年)に小動物を扱う動物病院が開設した数は1万2616でした。そのうち、獣医師が一人の動物病院の数は7932であり、全体の約6割を占めています。

出典:農林水産省 令和4年飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)
https://www.maff.go.jp/

多くの動物病院では獣医師一人で診察をおこなうことになるため、来院するペットの数が多いと待ち時間が増える原因となってしまいます。

診察に時間がかかりやすい

ペットの診察は、人間の診察と比べると時間がかかりやすい傾向にあります。

その理由は、動物は言葉を発しないことと関係しています。ペットの症状を判断するためには、飼い主にペットの様子を聞き取りすること、そして、ペットの様子を観察しながら「どのような症状であるか」を推測しなければなりません。

このような手順を踏まなければならないため、ペットの症状を特定するまでに時間がかかることもあります。そのため、ペットの診察は時間がかかりやすいといえます。

電子カルテの運用に関する課題

動物病院は獣医師が少ないうえに診察に時間がかかることがあるため、業務の効率化を図ることが重要となります。

その対策としては電子カルテのシステムを導入することが効果的です。ただし、電子カルテを導入する場合の課題としては、病院内にサーバーを設置する必要がある場合は導入コストがかかるだけでなく、サーバーのメンテナンス費用もかかります。

そのほか、電子カルテを利用する場合、データの管理も課題となります。電子カルテに記載されている内容には個人情報が含まれるため、万が一データが流出してしまうと病院としての信頼を失うことにもなりかねません。

タブレットで電子カルテを活用

タブレットで電子カルテを利用する場合のメリットとしては、下記があげられます。

・場所を問わずに利用
・設置スペースを確保しやすい
・データはクラウド保存 データ流出のリスクが抑えられる

それぞれのメリットについて説明します。

場所を問わずに利用可能

タブレットに電子カルテが表示されれば、場所を問わずにカルテの内容をチェックできます。

診察室で利用するほかにも、レントゲン室など、診察室以外でも電子カルテの確認ができるため、以前の診察内容を簡単にチェックしたい場合は、タブレットの電子カルテが効果的です。

設置スペースを確保しやすい

電子カルテにタブレットを利用する場合、設置場所を確保しやすい点がメリットです。

紙のカルテの場合、診察するペットの数が増えるほどカルテの保管場所も十分に確保する必要があります。また、電子カルテをサーバーに接続する場合、パソコンの設置場所に加えてサーバーの設置スペースも必要となるため、十分な広さを確保しなければなりません。

その点、タブレットなら画面の大きさが比較的コンパクトであるうえに薄型であるため、わずかなスペースがあれば十分に設置できます。

病院内にはさまざまな道具を設置しなければならないため、スペースの確保が難しい場合がありますが、タブレットなら設置場所を簡単に決められます。

データはクラウド保存 データ流出のリスクが抑えられる

タブレットで電子カルテを利用する場合、そのデータはクラウド上に保存されます。

クラウド上でデータを保存するメリットは、病院内で電子カルテのデータを管理する作業が省ける点です。

カルテを紙媒体で保管している場合は、誤って紛失してしまう可能性があります。また、電子カルテがサーバーに接続されている場合、サーバー内にカルテのデータを管理しているため、万が一不正アクセスの被害を受けてしまうと、カルテのデータが流出してしまうこともあり得ます。

その点、カルテのデータをクラウドに保存すれば、十分なセキュリティ対策を講じているクラウドストレージが多いため、病院内でカルテのデータを保管するよりも安心感があります。

ただし、クラウドストレージのデータの保存は100%安全であるとは限りません。利用するクラウドストレージがどのようなセキュリティ対策を講じているかを事前に確認しておくことで、データ管理のリスクを低く抑えられます。

タブレットを待合室に設置する

動物病院ではタブレットを診察で使用するほかにも、待合室に設置して診察待ちの人に利用してもらう方法もあります。

先述したとおり、動物病院の多くは獣医師が一人で対応していることが多いです。そのため、他のペットが診察を受けている場合は待ち時間が長くなることもあります。

待合室に設置するタブレットに雑誌が読めるアプリをインストールしておけば、診察待ちの人は雑誌を読みながら時間を過ごすことができます。待ち時間をできるだけ長く感じないようにするためには、タブレットを利用してもらうことが効果的といえます。

まとめ

動物病院で獣医師がタブレットを利用するメリットは、タブレットを持ち運べることで電子カルテをどこでも閲覧できる点です。

また、タブレット型の電子カルテなら病院内にサーバーの設置が不要であり、データをクラウド上に保管できることもメリットとなります。

病院を経営するにあたっては、カルテに記載された情報の流出、あるいは紛失をしないように十分な管理が求められますが、クラウド保管することによって電子カルテの情報が流出するリスクを抑えられます。

業務の効率化を図り、そして電子カルテの情報を確実に管理するためにも、タブレットの導入を検討してみましょう。

クリニックや病院など、医療現場でのタブレットの活用について知りたい方は、こちらも参考にしてみてください。